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ATS-DKの地上子観察と設置方法の分析

2010年8月の18日と19日に鹿児島本線の黒崎―原田間(上り方向)でかぶりつきを行い、ATS-DKの地上子と思われる黄色いカバーのかかった新設地上子を見てきました。新設地上子は、2009年4月の段階で南福岡―原田間に設置されていましたが、今回の観察で、新たに赤間―博多間に設置されていることを確認しました。観察によってATS-DKの地上子の設置パターンなどがわかったため説明します。またJR九州で多数設置している速度警戒装置とDN形の相性が悪いことなども解説します。

停止信号に対してのみパターンが発生する

観察の報告の前に基本事項の確認になるが、歴史的な順序を見ながら、国鉄S形、大手私鉄の多段階照査式、国鉄P形、及び今回のDK形について、中間現示に対する扱いを中心に違いを見ていこう。最初に登場した国鉄S形では、中間現示に対する動作はなく、停止現示の信号機に対する警報のみであった。しかし信号機の間隔によっては、警報地点が1つ手前の信号機を跨ぐことがあった。その後に登場した大手私鉄の多段階の速度照査では、中間現示での速度照査を行っていた。その後登場した国鉄のP形はパターン制御になったが、停止現示の信号に対してだけパターンが発生するかたちで、中間現示では照査を行わない仕様となった。DKの場合も同様に、停止現示の信号機に対してだけパターンが発生し、中間現示では照査が行われない。

DKの設置法は拠点方式

ATS-Pでは、JR西日本が「拠点P」と呼ばれる、絶対信号機など一部の重要な信号機だけをP形にし、他は従来のSW形のままにする方式を採用した。P形が高価であったため一度に全区間に設置するのは大変であるため、停車場の出発信号機・場内信号機を中心にP形の区間を作る形とした。当初P形はこのような仕様ではなかったが、JR西日本が独自にこのような仕様で導入した。

一方、ATS-Dxは従来からのATS-Sxと混在することが可能なシステムとして開発された。地上設備の面では、S形の区間の一部だけに、重複してDK形の地上子を設置した区間を作ることができ、またS形の車両はそのままS形の動作のままで走行でき、DK形を搭載した車両はDKの区間ではDKの動作をし、S形の区間ではS形として動作する。

今回地上子を見てきて、DK形が出発信号機と場内信号機(絶対信号機)、及びごく一部の閉塞信号機に対してのみ設置されていることがわかった。今回の上り方向だけのかぶりつきでは、気がついた限りでは閉塞信号機に対する設置は、東郷駅手前の第1閉塞信号機に対するものだけであった。

従来のS形地上子との位置関係

パターン発生

従来のSK形のロング地上子は、最高速度で走行中に警報が動作し、5秒以内に確認扱いを行わなかった場合に非常ブレーキをかけても、対象となる停止信号をオーバーしないような配置になっている。一方DK形では、地上子でパターンが発生した後、パターンに接近すると警報がなり、パターンを超過した時にブレーキがかかる。同じパターン制御のP形では、パターンの減速度は常用最大ブレーキや非常ブレーキの加速度の大きさより低い加速度の大きさである。DKでのパターンがどのような減速度になっているかは公表されていないが、パターンに当たった時に自動でかかるブレーキの方が強くなくてはならないため、常用最大や非常よりも低い減速度だろう。新設の地上子は従来のロング地上子より手前に設置されているのは、パターン接近からパターンまでの距離的または時間的余裕を持たせるためだろう。

駅間に並ぶ閉塞信号機には従来のS形のロング地上子のみが設置されていて、駅に接近すると場内信号機に対する地上子がある。場内信号機に対するDKのものと思われる新設地上子があってから、その先に既設のS形ロング地上子があるかたちである。


九産大前駅の下り線。3つの赤丸は、手前から第1城内信号機に対するDKパターン発生地上子、踏切の先の○は第1城内信号機に対するSKロング地上子、そして第1閉塞信号機である。


踏切手前まで進んだ地点からの写真。手前から第1城内信号機に対するSKロング地上子と、奥の第1閉塞信号機。

パターン解除

パターン解除のための地上子が複数設置されている場合がある。その場合の最も信号機に近い新設地上子は、絶対信号機直前にある既設の即時停止地上子の手前である。機外停止する場合はこの地上子の手前に停止することになる。


吉塚駅鹿児島上り主本線である。奥の信号機は隣の箱崎駅に繋がる本線出発と、右側にある電留線の場内。この線路では、電留線から博多駅に向かって発車する下り回送とのタイミングで、ノロノロ運転や一旦停止して開通待ちをすることがある。そのためと思われる、パターン解除用と思われる新設地上子が出発・場内信号機の手前に並んでいる。


信号機手前の最後の地上子は、直下で非常をかけるためのSKの即時停止のオレンジのもので、DKのパターン解除用と思われる新設地上子を設置する場合は必ず手前に設置している。機外停止する場合はこの地上子を超えないようにしなければならない。

地上子を使わないパターン解除

DKの地上子が設置されている区間は、たいていの場合は第1閉塞信号機の手前から、出発信号機を越えたところまでである。実際に見ていくと、先行列車に追いついて減速することの多い場内信号機手前に関しては、パターン解除用と思われる新設地上子がいくつか並んでいるが、出発信号機に対してはパターン解除用の新設地上子が全くない場合がある。そのため、パターン解除の信号を受信せずにパターンを解除する仕組みが必要である。例えば、一旦停止後に、JR九州では運転席を立たないと手が届かない位置に設置してある警報持続ボタンを押すといった方法が考えられる。また確実性をきすためには、この方法ではパターンが完全には消去はされず、出発信号機に対応する即時停止地上子をDBに登録しておき、103kHzで発振しているのを通り過ぎると完全にパターンが消去される方法も考えられる。しかしどちらも想像にすぎず、実際の仕様は使用後に見ないことにはわからないだろう。

なお、ATS-Dxが開発中でATS-Xの名称だった頃のパターン解除方法は3通りある。運転協会誌,2006年4月号,ATS・ATC特集号,次期車上速度照査式ATSの開発,新井英樹,佐藤和敏によると、地上子によって行う基本レベル、レールに情報を流す上位レベル、パターン解除を行わない簡易レベルがある。簡易レベルはパターンをくぐり抜けて一定距離走るまでパターンを維持する仕組みである。閑散線区用に作られた機能をそのまま過密区間で使用しているわけがないので、実際上問題ない仕様に変更されているはずだ。


香椎の上り場内信号機の手前。水色の矢印が新設地上子で、パターン解除用途思われる。因みに踏切の先は速度警戒の地上子で場内信号機手前が直下非常の即時停止地上子。


クリックで拡大

香椎駅を上り列車から撮影。左から上り待避線、上り主本線、下り主本線。写真右手前に見える上り主本線の地上子は、出発信号機の先にある閉塞信号機に対するSKロング地上子。ここから先にある地上子は、出発信号機手前のSK即時停止地上子だけである。新設のDK地上子はない。


上り待避線の停止位置まで進んでから撮影。1つ上の写真から先は、この写真に写っている3つの即時停止地上子しかない。

絶対位置確定用地上子

新設地上子が設置されている停車場では、停車場の出発信号機を過ぎ、最後のポイントを通過した場所に新設地上子が2つ1組で設置されている。駅間が短いところや構内が広いところでは、次の駅の場内信号機に対する最初の新設地上子が、手前の駅の構内にある場合もある。このような場合にもこの2つ1組の新設地上子は設置されている。このことから、拠点区間の終了を表すものではなく、以前の記事で紹介した総研の論文の図4に描いてある絶対位置確定用地上子であることがわかる。

絶対位置確定用地上子については、開発中のATS-Xの文献に詳しい情報があった。日本鉄道電気技術協会,鉄道と電気技術,2008年10月,特集:事故防止,〔テーマ技術資料〕,現行ATSと互換性を有する車上速度照査式ATS-X,土師将人,新井英樹によると以下のようにある。

絶対位置確定用地上子は、副本線進入のため自列車の位置補正などが行えるよう、原則として連動駅間に最低1つ以上を設置することとしている。
また、
なお、絶対位置確定用地上子を設置する際に、電源ケーブルの敷設を不用とするため、車両が通過した時のみ、固定のデジタル情報を送信できる電源ケーブルレス地上子を使用する。
とある。

こちらの資料でも駅を出てポイントを過ぎたところに2つの地上子が描かれていて、また本線以外で走行距離がずれたのを補正することからも最後のポイントを過ぎたところにあるこの地上子が絶対位置確定用地上子で間違いないだろう。

なお実際の観察では、吉塚から上りで箱崎に向かうと、吉塚の出発の次が箱崎の場内であるが、吉塚の最後のポイントを過ぎた位置には絶対位置確定地上子は設置されていない。他にも構内が繋がっている千早操車場と千早の間にも設置されていない。また、駅間に閉塞信号機がない千早と香椎では設置されている。このあたりの基準についてはよくわからなかった。


博多駅構内で吉塚に向かう上り列車に乗り、第1閉塞信号機の確認位置から撮影。写真手前の新設地上子は、吉塚の場内信号機に対するパターン発生用と思われる。


更に進むと吉塚場内に対するSKロング地上子がある。写真に写っている「ハ」の字の片渡りまでが博多駅構内で、その先に第1閉塞信号機がある。


片渡りの途中から撮影。最後の分岐器を過ぎたところに黄色いカバーのかかった新設地上子が2つ1組で設置してある。吉塚の場内信号機に対する新設地上子は既に通過済みで、拠点区間の終端ではない。


こちらは下り上り列車で箱崎駅を発車してポイントを過ぎたところの絶対位置確定用地上子である。スラブ軌道なので地上子から左にケーブルが2本伸びているのがよくわかり、制御箱に繋がっているようだ。電源ケーブルレス地上子は電源ケーブルを外部から取ってはいないが、制御部は地上子の外にある。このことは鉄道総研・月例発表会2009年8月19日 第226回車上速度照査式ATS-Xシステム,新井英樹の3ページ下部を見ればわかる。

DN形と相性が悪い速度警戒装置

さて、JR九州ではS形の段階で登場していた分岐器速度警戒装置が場内信号機手前に多数設置されていて、待避線に進入する場合に分岐器の速度制限に対する速度照査を行い、照査速度を超えた場合にはS形のロング警報が鳴る仕組みだ。この装置が設置されている場所では、出発信号機に対するS形ロング地上子は場内信号機の内方(先)に設置され、低速で走行していた場合には構内に入ってから出発信号機に対するロング警報を受信するかたちだ。

他社での扱いは知らないが、JR九州の駅で速度警戒装置が設置されている停車場では、進路に関係なく出発信号機が停止を現示している時には速度警戒装置を使っている。具体的には、ノロノロ運転などで照査速度より低く走行している場合は、主本線上で着発する列車や通過する列車であっても、駅構内に入ってからの速度照査なしのロング地上子を通過するまではロング警報を受信しない仕組みである。S形のロング警報は最高速度からの防護ができなければならず、低速で走行している列車にとってはかなり手前からロング警報がなるかたちになるが、分岐器速度警戒装置が設置されている場所については速度に応じて最初の警報箇所が変わる仕組みになっている。

さて、この速度警戒装置が設置されている停車場で、出発信号機が停止の場合、ATS-DKとATS-DNでどのように動作が異なるのか比較してみよう。

ATS-DKの場合

DK形で本線の場合、速度警戒装置の更に手前の地上子で出発信号機に対するパターンを発生させるはずなので、途中のS形ロング警報を受信してもDK形の動作のみでロング警報は鳴らない。そして出発信号機に対してのパターン照査は確実に行われる。また、速度警戒装置が出発信号機のみの速度照査としては速度が低く設定されているため、パターン照査の方がより実態に合った照査と言える。

一方待避線に入る場合は、出発信号機に対する信号パターンだけではなく、分岐器に対しての制限パターンも同時に発生させなければならない。従来の速度警戒装置では速度照査を行いロング警報を鳴らすだけだったが、警報を鳴らさずにパターン照査を行うことでより安全にしなければならない。

なお、DK形ではパターン発生の信号に信号機までの距離情報を入れているため、番線によって信号機の位置が異なる場合にも1つの地上子で対応が可能である。

ATS-DNの場合

DN形ではパターン発生時に距離情報を受信しないので、番線によって出発信号機の位置が大きく異なる場合は、番線によってロング地上子の場所を変えなければならない。まず、どの番線も出発信号機の位置が同じ場合を考えよう。

DN形で本線の場合、パターン発生はS形地上子によるS形ロング警報の信号を使って行う。速度警戒装置の速度照査で照査速度以下の場合はパターンは発生せず、速度警戒装置の2点間地上タイマー照査で照査速度を超えた場合にはパターンが発生する。速度警戒装置の手前でパターンを発生させようにも、S形ロング警報の信号をつかっているため従来のSN形のみの車両でロング警報が発生してしまう。このようにどちらかを立てればもう片方が立たない状況になる。

待避線に進入する場合も出発信号機に対するパターンは同様となるが、分岐器に対しての制限パターンも発生させなければならないのは同じである。なぜなら、分岐器に対しての速度警戒の照査速度を超えていても、出発信号機に対するパターンしか発生せず、またロング警報もないためである。そのため、DN地上子のデジタル信号で分岐器に対する速度制限パターンを発生させる必要がある。なお、速度警戒装置で照査速度以下だった場合は、速度照査なしの出発信号機に対するロング地上子でパターンが発生する。この点は本線の場合と同じである。

では、進路によって出発信号機の位置が異なる場合はどうなるだろうか? 速度警戒装置の手前でパターンを発生させる場合はSNのみの車両で速度警戒装置を使用する意味がなくなる。一方進路に関係なく速度警戒装置を使用するやり方をやめ、待避線に入る場合にだけ速度警戒装置を使用すれば、速度警戒装置のロング地上子でロング警報を受信した場合には待避線だとわかり、他のロング地上子で受信した場合には主本線だとわかる。この方法では主本線のロング地上子を手前に移動させなければならず、速度警戒装置との配置に注意が必要になる。速度警戒装置を待避線にのみ使用した場合、S形のみを搭載した列車が本線に進入する場合、低速で走行しているときも手前からパターンが発生する。

DN形ではパターン解除の地上子は新たに設置が必要だが、パターン発生の地上子は従来のものをそのまま使用できる特徴がある。DN形では速度警戒装置の点照査よりも安全度の高いパターン照査を使用している。しかし分岐器速度警戒装置が設置されている停車場で地上子がそのままの場合は、最高速度からパターン照査になるとは限らず、場合によってはより安全度の低い点照査の後、途中からパターン照査となる。また、これを解消するために地上子の設置法を変えた場合は、従来のS形のみの車両に対して速度に関係なく一律にロング警報が鳴り、速度に対する警報という意味合いが薄れてしまう。

JR九州での速度警戒装置の実際(写真)


千早操車場の上り。左が旅客線で両渡りを右に行くと貨物着発線。写真の白いS形ロング地上子は千早場内に対するもの。千早場内に対する新設のDKパターン発生用地上子は、既に通り過ぎた千早操車場の場内に対するパターン解除用のどれかが担っているはずだ。なお、ポイントの先の信号機の確認位置は、千早場内の1つ目の中継信号機のもの。


千早操車場の上り旅客線。写真は千早場内の1つ目の中継信号機で、写真手前の新設地上子は千早出発に対するパターン発生用と思われる。奥に見えるのは速度警戒装置の地上子。


1つ目の中継信号機を過ぎた地点で撮影。1つ目の速度警戒装置の地上子が見える。奥に見えるのは千早場内の2つ目の中継信号機。


2つ目の中継信号機を過ぎて少し進んだ地点で撮影。手前の3つの地上子は、手前から1番目の緑の地上子と3番目の白の地上子が速度警戒装置の地上子で、2番目の黄色いカバーがかかっているのが新設地上子。さらに場内信号機手前に黄色の新設地上子とオレンジの直下非常の地上子がある。


場内信号機手前、パターン解除用の新設地上子と、オレンジの即時停止地上子。場内信号機の先に白のロング地上子がある。


場内信号機を過ぎたところにある出発信号機に対するロング地上子。ノロノロ運転で速度が低かった場合には、ここで初めてロング警報が鳴る。

おわりに

以上が今回観察してきてわかったことであり、実際に使用開始してからかぶりついてみないとわからないこともいくつかあった。ATS-DKの車上装置は、ATS-DKの車上表示装置を見てきましたで示すとおり、表示灯が多数あるため被り付けば何をやっているのかは見てわかるだろう。今回よく解らなかった地上子を使わないパターン解除は、「信号P発生」の表示灯を見ればわかるし、絶対位置確定地上子は「DK位置確定」の表示灯を見れば解るだろう。

今年度に入ってから地上子が多数設置されたようであるため、今年度末に使用開始なのかもしれない。実際に使用開始された後に見てみるのが楽しみである。

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ATS-DNで信号機を跨いだパターン発生は可能なはず(訂正記事)

ATS-DKとATS-DNを比較しながら書いた7月17日の記事「JR九州が導入予定のATS-DKの紹介と考察 鉄道総研報告より」において、ATS-DNが信号機を跨いでパターン発生地上子を設置できないと書いていたが、考察が不足していて、実際にはできるはずである。

DNではパターン発生に130kHzのロング警報と同じ周波数を使用してたが、パターンの継続には別の周波数の108.5kHzを使っていた。この点が重要な点である。

信号を跨ぐ場合の例

今、第N閉塞信号機が停止現示の場合を考えよう。第N閉塞信号機に対するパターンを発生させる地上子は、130kHzで発振していることになる。この上を列車が通過すると、第N閉塞信号機に対するパターンが発生する。この地上子の先にある第N閉塞信号機に対する地上子は、パターンが継続中は108.5kHzで発振し、パターンを消去する時は103kHzで発振する。

ところで、第N閉塞信号機の内方(先)にある第N-1閉塞信号機に対するパターン発生の地上子が、信号の間隔の都合上、第N閉塞信号機の手前に設置されている場合を考えよう。この場合、第N閉塞信号機の外方(手前)の地上子で、108.5kHzを受信したときは第N閉塞信号機に対するパターン消去で、130kHzを受信したときは第N-1閉塞信号機に対するパターン発生とすることができ、区別が可能である。

なお従来のATS-Sxでは、103kHzと他の1つの周波数でしか発振できなかったが、上記の方式では1つの地上子でDNで使用する3種類の全ての周波数が発振できる地上子が必要となる。また、第N閉塞信号機のパターン消去の地上子と、第N-1閉塞信号機のパターン発生の地上子を、共通にしない場合には以下のような問題が生じる。

第N閉塞信号機のパターン継続を受信した後、次の地上子で第N-1閉塞信号機のパターン発生を受信した場合、第N閉塞信号機のパターンが継続されるのか消去されるのかがわからない問題が発生する。先行列車が第N閉塞信号機と第N-1閉塞信号機の間にいる場合、第N閉塞信号機と第N-1閉塞信号機の、両方のパターンが同時に発生することになる。この問題を解消するためには、第N-1閉塞信号機のパターンを発生させる、第N閉塞信号機の外方(手前)の地上子は、第N閉塞信号機のパターンの継続・消去の情報を伝える地上子と共通にし、以下のように動作すればよい。

  • 第N閉塞信号機のパターン継続の場合…108.5kHzで発振し、パターンが継続される。
  • 第N閉塞信号機のパターンが消去で、第N-1閉塞信号機が停止現示ではない場合…103kHzで発振し、パターンが消去される。
  • 第N閉塞信号機のパターンが消去で、第N-1閉塞信号機が停止現示の場合…130kHzで発振し、第N閉塞信号機のパターンが消去され、第N-1閉塞信号機のパターンが発生する。

以上のような動作をすれば問題は発生しないはずである。

おわりに

鉄道総研の技術論文には詳細が書かれていないので、こうなっていたらおかしいはずとか、こうやっているのが合理的だと勝手に考えることはできるが、絶対にこうだと断言することはできない。なお、従来のATS-SNでできたことができなくなることはあってはならないはずなので、ATS-DNで手前の信号機を跨いでのパターン発生はできるはずである。この点にからも考察が不足していたといえる。

参考文献

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JR九州が導入予定のATS-DKの紹介と考察 鉄道総研報告より

JR九州の事業計画に新型ATS(ATS-DK)の情報が掲載されて以降、ATS-DKの内容に関する公式発表がJR九州から行われることはなかったが、鉄道総合技術研究所の発行する技術論文誌に情報が掲載されていたので紹介する。ATS-Dxは総研が開発したがJRが導入しなかったATS-Xを、車上データベースを使い低コスト化したもので、JR北海道向けのDNとJR九州向けのDKがあり仕様の違いも説明されている。また読んでいて疑問などが生じたためそれに対する分析なども書いている。

ATS-Pに対するATS-Dxの違い

従来のSx形では線路内側の進行方向左側に地上子を設置していたが、P形では従来のSx形とは全く異なる形状の地上子を線路中央に設置して車上子も新たに車両に搭載していた。今回のDxではSxと同じ形状の地上子を使い、従来の共振周波数にディジタル信号を重ねて送信できる(ATS-Xで開発済み)。車上子もSxと同じものを使い、制御部分などは置き換える。また地上ケーブルは同じものを使えるなど、従来のSxの資産を最大限有効活用できるようになっている。またP形では全ての速度照査は地上からの情報を基に行っていたが、Dxでは車上データベース(DB)の活用によって、車種によって異なる速度制限のパターン照査は車両側で行うことができる。

ATS-Sxとの互換性

Sx形からP形に切り換えた場合、P形の車上装置を持たないSxのみの車両を走行させるにはSx形の地上装置を残す必要があるが、Dx(特にDN)の場合はDxに切り換えた区間にそのままSx形の車両が進入してもSxの機能が維持されることが読み取れる。

ATS等の安全装置は異常があった場合にだけ介入した方がよいが、S形ではそうなってはいなかった。Dx形はP形と同じで異常があった場合にだけ介入する。Dx区間では従来のSx形の機能が維持されるが、Dx車上装置搭載車では停止信号に近づいた時のロング警報と確認扱いはなく、パターンに接近・超過した場合の警報・ブレーキ動作だけである。当ブログ記事「ATS-DKの車上表示装置を見てきました」で今年2月に紹介した車上装置の写真に「確認遅れ」の表示灯があったが、これはSK区間を走行するときのための表示ということになる。

DKの仕様がDNと異なることについての考察

ATS-DNについての考察が足りず、間違ったことを書いてた。その点についてはトラックバックしている訂正記事をごらんいただきたい。

DKはDNと信号パターンの部分で仕様が異なる。4.1節でDNの説明の後に、それに対してのDKについての説明が2文で書かれている。

DKではDx地上子からの共振周波数とディジタル信号(信号機までの距離)を同時受信することにより,その情報を基に速度照査パターンを作成する。これは,既設の2点間速度照査用として使用されていることによる。
ATSのアナログ発振周波数一覧
SNSKDN
130kHzロング警報(白)信号P発生
103kHz動作・警報なし信号P消去
108.5kHz設定なし2点間車上時素
照査(灰緑)
信号P継続
123kHz即時停止(オレンジ)

落ち着いて読んでみると日本語の文のつながりがおかしいことに気がつく。

まず気がつくのは、DKにおいて現示アップ時の速度照査パターン消去をどのように行っているかについて明示的に述べられてはいないが、共振周波数を使うDNに対し、ディジタル信号を使っていると読み取るのが妥当だろう。

また後の文で述べられている"理由"が何についての理由なのかが明示的に述べられていないが、前の文に対する理由ではなく、「現示アップ時の速度照査パターン消去を、DNと異なりディジタル信号により行っていること」に対するものと考えられる。SNでは設定のない108.5kHzがSKでは2点間の車上タイマー照査で使われている(灰緑の地上子で近年曲線での速度照査のため多数設置が行われている)。SKでは既に使われている周波数であるため別の用途を割り当てることができないからである。

一方で、前の文で書かれている信号パターンの発生方法がなぜDNと異なるのかの理由が書かれていない。この部分の理由として2つ挙げることができる。

1.DNにおいてパターン発生に使用している130kHzの発振周波数を分岐器速度警戒装置でも使用していることが挙げられる。これは2点間の地上タイマー照査で、進行方向手前の緑の地上子(あるいはループコイル)で車上子を検出し、時素で進行方向奥の地上子の周波数を切り替える。照査速度未満であれば130kHzから103kHzに切り替わった後に車上子が通過するが、照査速度以上であればロング警報のままになる。DNでは、信号機に付随するS形地上子の設置位置を車上DBに登録しておき,登録位置に対して一定の範囲内で共振周波数信号を受信した場合,車上で速度照査パターンを作成する(103kHz:信号パターン消去,108.5kHz:信号パターン継続)。とあり、信号機に対応する地上子として登録された位置に対し、一定の範囲内で130kHz信号があればパターン発生としているため、この方式では"信号機に対する地上子"と"分岐器速度警戒装置の地上子"の位置関係に制約が生じる。また、停止信号に対するのと同じ周波数で分岐器の制限超過に対する警報を行っているため、DB作成において信号機に対応しない130kHz信号の地上子を設定しなければならず、取り違える可能性が残されている。

閉塞長が短い区間でDNを使用した場合の問題

2.JR九州の過密区間では閉塞区間の長さが400m未満のところもあるが、現行のSKで停止信号に対するロング地上子を、停止信号の外方(手前)の別の主信号機を跨いでその外方(手前)に設置している場所が多数あるため、アナログの発振周波数のみではどの信号機に対するパターン消去やパターン継続なのかを判別できない。またそれができるようにDBを作成できたとしても作成者が取り違える可能性が残り、あまりよいやり方ではない。

JR九州の過密区間では閉塞区間の長さが400m未満のところもあるが、このような区間で停止信号に対するロング地上子が、手前の信号機の内方に設置してある場合、手前の制限信号できちんと減速していない場合には地上子の位置で非常ブレーキをかけても停止できない場合がある。DNではこのように1つ手前の信号機の内方にしかロング地上子を設置できないようであるため、停止信号に対応するロング地上子の地点で信号パターンが路線最高速度や車両最高速度を下回っていた場合、停止信号までに停止させることができない状況が発生しうる。

このようにDKでは複数の信号機を跨いだ位置の地上子で信号パターンの発生や解除を行うため、対応する停止信号までの距離情報を送り、またDB作成や車上装置内のアルゴリズムの複雑化を避けていると思われる。また、パターンの減速度が車両のブレーキ性能の限界より小さい加速度で作られることから、従来のロング地上子よりも手前でパターンを発生させなければならない場合がありうる。DKにおける信号パターン発生が103kHz信号+ディジタル信号であり130kHzのロング警報+ディジタル信号ではないことからも、従来のロング地上子とは違う位置でパターンを発生させる場合があると推察できる。

分岐器速度制限機能を使った踏切遮断時間短縮のための誤通過防止制御に関する考察

3.1節に、車上DBに基本運用ダイヤを登録し,列車番号設定器により設定された列車番号に基づき,停車駅誤通過防止制御を実現できる拡張性も有している。とあり、停車駅誤通過防止制御が実現できるとあるが、この機能は地上側から情報を受け取らない車両側で閉じた構造をしている。地上から情報を受け取る制御の部分までの拡張性を有しているかは書かれていないためわからないが、閉じた構造ではダイヤが乱れるなどの状況ではそのままでは活用できない。そのため出発信号機のないいわゆる停留場での踏切遮断時間を短くするための制御としての誤通過防止パターンとしては利用できない。地上からの情報により車上パターンを選択できる機能としては「分岐器速度制限機能」があるため、これを10km/h程度の制限というかたちで使うことにより、停車/通過の情報を進路の情報のかたちで地上側から送って踏切用誤通過防止パターンの制御を実現することがシステム上は可能である。

終わりに

JR九州の地元福岡都市圏に住む信号オタとしては、パターン制御のATSが入らないのかとまだかまだかと待っていたが、前年度の事業計画にATS-DKの記述が現れ、今年の5月に博多―小倉間の特急に乗車した際、隣の線路に多数黄色いカバーのかかった地上子が設置されるなど、着々と準備は進んでいるようである。鹿児島本線では最高速度130km/hの特急から貨物までが走行し、閉塞長が短い区間ではYG現示の信号が4つ並ぶような区間があるため、P形のように車両のブレーキ性能に合わせた現示アップがなければならないと思い込んでいたが、よく考えてみれば速度差が一番大きいのはGの130km/hからYGの70km/hの減速であり、京急や京成が導入しているYGFの導入でなければ対応できず、DKにこのような機能がないことも納得ができる。最後に、去年の4月に鹿児島本線の二日市駅下り主本線(1番線)で自身が撮影した新設地上子の(大容量JPEG)写真ファイルへのリンクを置いて終わりとしたい。

参考文献

  • 運転技術研究会,信号及び線路 ―本科― …ATS-S形による分岐器速度警戒装置に関する部分。
  • 新井英樹,佐藤和敏:次期車上速度照査式ATSの開発,運転協会誌,通巻第562号,2006年4月号 …ATS-Xの解説
  • 当ブログ記事,ATS-DKの車上表示装置を見てきました

8月21日追記・訂正記事

ATS-DNでは手前の信号機を跨いでのパターン発生ができないようであると書いていたが、考察が不足していて実際にはできるはずだと気がついた。→訂正記事:「ATS-DNで信号機を跨いだパターン発生は可能なはず(訂正記事)

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ATS-DKの車上表示装置を見てきました

813系の1100番代に乗車して、初めてATS-DKの車上表示機を見ました。運転台横の車体外部の保安装置の表示は、「DK」の上からシールが貼られて「SK」だけが見える状態になっていました。日豊本線のワンマン化にあわせて登場した1100番代の最終増備分は、ATS-DKが取り付けられた状態で新製されましたが、まだ実際には使用していないのでシールが上から貼られたものと思われます。

運転台を見たところです。右にモニターが見えますが、その上に後から取り付けられた横長の四角い装置がATS-DKの表示機です。

表示機の部分を撮った写真です。クリックで拡大します。写真では字が潰れているので下に書いておきます。

上の段左側、文字の下にランプがついている部分は左から順に、「直下/ 誤出発」、「確認 遅れ」、「速度 照査」、「信号P 超過」、「制限P 超過」、「頭打P 超過」の6つです。

上の段の中央の3つは、左から順に「DK 位置確定」、「SK」、空欄 となっています。その右のランプの上に「地上子」と書いてあります。この地上子のランプと左の空欄の表示の間に、指で押せないような小さなボタンがあります。

下の段は左から順に、「信号P 発生」、「信号P 接近」、空欄、空欄、「ATS動作」、「故障」となっています。その右にあるのは表示灯の明るさを調整するスイッチで、左から順に「明」、「暗」です。

最後に右端に縦に3つならんでいるのは、上から順に、「DK開放」、「入標入換」、「非常運転」です。

ATS-DKは、鉄道総研が開発したATS-Xのことだろうと言われていますが、表示機にDKとSKの両方の表示があり、また「確認遅れ」の表示があることから、両方の地上設備があるところで併用できるのがわかります。信号と制限の車上データベースを持ち、地上子で位置確定することから、「DK位置確定」の表示もあります。DK特有の部分はこの2点でしょうか?

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篠栗線の長者原駅付近の速度調査の調査漏れについて

去年の5月に書いた篠栗線の曲線制限のATS速度照査の再調査に調査漏れがありましたので報告します。

前回の記事の長者原駅付近の速度照査では、門松から長者原の方向の速度照査については書いていましたが、逆方向については速照があることに気づいていませんでした。

速度照査がある地点は長者原駅構内の主本線で、門松側の端の方にあります。写真中のオレンジの地上子は絶対停止の地上子で、灰緑色の2つの地上子が速度照査の地上子です。この照査は待避線にはありません。これは通過列車がないことと、制限が駅構内にもあることが理由でしょう。また、主本線の門松方のポイントには制限があるので、照査する意味はそこまで大きくはないような気もします。

照査速度は72km/hですが、そもそもこの先の分岐器の制限は72km/h以下ではないでしょうか。

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