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ATS-DKの地上子観察と設置方法の分析

2010年8月の18日と19日に鹿児島本線の黒崎―原田間(上り方向)でかぶりつきを行い、ATS-DKの地上子と思われる黄色いカバーのかかった新設地上子を見てきました。新設地上子は、2009年4月の段階で南福岡―原田間に設置されていましたが、今回の観察で、新たに赤間―博多間に設置されていることを確認しました。観察によってATS-DKの地上子の設置パターンなどがわかったため説明します。またJR九州で多数設置している速度警戒装置とDN形の相性が悪いことなども解説します。

停止信号に対してのみパターンが発生する

観察の報告の前に基本事項の確認になるが、歴史的な順序を見ながら、国鉄S形、大手私鉄の多段階照査式、国鉄P形、及び今回のDK形について、中間現示に対する扱いを中心に違いを見ていこう。最初に登場した国鉄S形では、中間現示に対する動作はなく、停止現示の信号機に対する警報のみであった。しかし信号機の間隔によっては、警報地点が1つ手前の信号機を跨ぐことがあった。その後に登場した大手私鉄の多段階の速度照査では、中間現示での速度照査を行っていた。その後登場した国鉄のP形はパターン制御になったが、停止現示の信号に対してだけパターンが発生するかたちで、中間現示では照査を行わない仕様となった。DKの場合も同様に、停止現示の信号機に対してだけパターンが発生し、中間現示では照査が行われない。

DKの設置法は拠点方式

ATS-Pでは、JR西日本が「拠点P」と呼ばれる、絶対信号機など一部の重要な信号機だけをP形にし、他は従来のSW形のままにする方式を採用した。P形が高価であったため一度に全区間に設置するのは大変であるため、停車場の出発信号機・場内信号機を中心にP形の区間を作る形とした。当初P形はこのような仕様ではなかったが、JR西日本が独自にこのような仕様で導入した。

一方、ATS-Dxは従来からのATS-Sxと混在することが可能なシステムとして開発された。地上設備の面では、S形の区間の一部だけに、重複してDK形の地上子を設置した区間を作ることができ、またS形の車両はそのままS形の動作のままで走行でき、DK形を搭載した車両はDKの区間ではDKの動作をし、S形の区間ではS形として動作する。

今回地上子を見てきて、DK形が出発信号機と場内信号機(絶対信号機)、及びごく一部の閉塞信号機に対してのみ設置されていることがわかった。今回の上り方向だけのかぶりつきでは、気がついた限りでは閉塞信号機に対する設置は、東郷駅手前の第1閉塞信号機に対するものだけであった。

従来のS形地上子との位置関係

パターン発生

従来のSK形のロング地上子は、最高速度で走行中に警報が動作し、5秒以内に確認扱いを行わなかった場合に非常ブレーキをかけても、対象となる停止信号をオーバーしないような配置になっている。一方DK形では、地上子でパターンが発生した後、パターンに接近すると警報がなり、パターンを超過した時にブレーキがかかる。同じパターン制御のP形では、パターンの減速度は常用最大ブレーキや非常ブレーキの加速度の大きさより低い加速度の大きさである。DKでのパターンがどのような減速度になっているかは公表されていないが、パターンに当たった時に自動でかかるブレーキの方が強くなくてはならないため、常用最大や非常よりも低い減速度だろう。新設の地上子は従来のロング地上子より手前に設置されているのは、パターン接近からパターンまでの距離的または時間的余裕を持たせるためだろう。

駅間に並ぶ閉塞信号機には従来のS形のロング地上子のみが設置されていて、駅に接近すると場内信号機に対する地上子がある。場内信号機に対するDKのものと思われる新設地上子があってから、その先に既設のS形ロング地上子があるかたちである。


九産大前駅の下り線。3つの赤丸は、手前から第1城内信号機に対するDKパターン発生地上子、踏切の先の○は第1城内信号機に対するSKロング地上子、そして第1閉塞信号機である。


踏切手前まで進んだ地点からの写真。手前から第1城内信号機に対するSKロング地上子と、奥の第1閉塞信号機。

パターン解除

パターン解除のための地上子が複数設置されている場合がある。その場合の最も信号機に近い新設地上子は、絶対信号機直前にある既設の即時停止地上子の手前である。機外停止する場合はこの地上子の手前に停止することになる。


吉塚駅鹿児島上り主本線である。奥の信号機は隣の箱崎駅に繋がる本線出発と、右側にある電留線の場内。この線路では、電留線から博多駅に向かって発車する下り回送とのタイミングで、ノロノロ運転や一旦停止して開通待ちをすることがある。そのためと思われる、パターン解除用と思われる新設地上子が出発・場内信号機の手前に並んでいる。


信号機手前の最後の地上子は、直下で非常をかけるためのSKの即時停止のオレンジのもので、DKのパターン解除用と思われる新設地上子を設置する場合は必ず手前に設置している。機外停止する場合はこの地上子を超えないようにしなければならない。

地上子を使わないパターン解除

DKの地上子が設置されている区間は、たいていの場合は第1閉塞信号機の手前から、出発信号機を越えたところまでである。実際に見ていくと、先行列車に追いついて減速することの多い場内信号機手前に関しては、パターン解除用と思われる新設地上子がいくつか並んでいるが、出発信号機に対してはパターン解除用の新設地上子が全くない場合がある。そのため、パターン解除の信号を受信せずにパターンを解除する仕組みが必要である。例えば、一旦停止後に、JR九州では運転席を立たないと手が届かない位置に設置してある警報持続ボタンを押すといった方法が考えられる。また確実性をきすためには、この方法ではパターンが完全には消去はされず、出発信号機に対応する即時停止地上子をDBに登録しておき、103kHzで発振しているのを通り過ぎると完全にパターンが消去される方法も考えられる。しかしどちらも想像にすぎず、実際の仕様は使用後に見ないことにはわからないだろう。

なお、ATS-Dxが開発中でATS-Xの名称だった頃のパターン解除方法は3通りある。運転協会誌,2006年4月号,ATS・ATC特集号,次期車上速度照査式ATSの開発,新井英樹,佐藤和敏によると、地上子によって行う基本レベル、レールに情報を流す上位レベル、パターン解除を行わない簡易レベルがある。簡易レベルはパターンをくぐり抜けて一定距離走るまでパターンを維持する仕組みである。閑散線区用に作られた機能をそのまま過密区間で使用しているわけがないので、実際上問題ない仕様に変更されているはずだ。


香椎の上り場内信号機の手前。水色の矢印が新設地上子で、パターン解除用途思われる。因みに踏切の先は速度警戒の地上子で場内信号機手前が直下非常の即時停止地上子。


クリックで拡大

香椎駅を上り列車から撮影。左から上り待避線、上り主本線、下り主本線。写真右手前に見える上り主本線の地上子は、出発信号機の先にある閉塞信号機に対するSKロング地上子。ここから先にある地上子は、出発信号機手前のSK即時停止地上子だけである。新設のDK地上子はない。


上り待避線の停止位置まで進んでから撮影。1つ上の写真から先は、この写真に写っている3つの即時停止地上子しかない。

絶対位置確定用地上子

新設地上子が設置されている停車場では、停車場の出発信号機を過ぎ、最後のポイントを通過した場所に新設地上子が2つ1組で設置されている。駅間が短いところや構内が広いところでは、次の駅の場内信号機に対する最初の新設地上子が、手前の駅の構内にある場合もある。このような場合にもこの2つ1組の新設地上子は設置されている。このことから、拠点区間の終了を表すものではなく、以前の記事で紹介した総研の論文の図4に描いてある絶対位置確定用地上子であることがわかる。

絶対位置確定用地上子については、開発中のATS-Xの文献に詳しい情報があった。日本鉄道電気技術協会,鉄道と電気技術,2008年10月,特集:事故防止,〔テーマ技術資料〕,現行ATSと互換性を有する車上速度照査式ATS-X,土師将人,新井英樹によると以下のようにある。

絶対位置確定用地上子は、副本線進入のため自列車の位置補正などが行えるよう、原則として連動駅間に最低1つ以上を設置することとしている。
また、
なお、絶対位置確定用地上子を設置する際に、電源ケーブルの敷設を不用とするため、車両が通過した時のみ、固定のデジタル情報を送信できる電源ケーブルレス地上子を使用する。
とある。

こちらの資料でも駅を出てポイントを過ぎたところに2つの地上子が描かれていて、また本線以外で走行距離がずれたのを補正することからも最後のポイントを過ぎたところにあるこの地上子が絶対位置確定用地上子で間違いないだろう。

なお実際の観察では、吉塚から上りで箱崎に向かうと、吉塚の出発の次が箱崎の場内であるが、吉塚の最後のポイントを過ぎた位置には絶対位置確定地上子は設置されていない。他にも構内が繋がっている千早操車場と千早の間にも設置されていない。また、駅間に閉塞信号機がない千早と香椎では設置されている。このあたりの基準についてはよくわからなかった。


博多駅構内で吉塚に向かう上り列車に乗り、第1閉塞信号機の確認位置から撮影。写真手前の新設地上子は、吉塚の場内信号機に対するパターン発生用と思われる。


更に進むと吉塚場内に対するSKロング地上子がある。写真に写っている「ハ」の字の片渡りまでが博多駅構内で、その先に第1閉塞信号機がある。


片渡りの途中から撮影。最後の分岐器を過ぎたところに黄色いカバーのかかった新設地上子が2つ1組で設置してある。吉塚の場内信号機に対する新設地上子は既に通過済みで、拠点区間の終端ではない。


こちらは下り上り列車で箱崎駅を発車してポイントを過ぎたところの絶対位置確定用地上子である。スラブ軌道なので地上子から左にケーブルが2本伸びているのがよくわかり、制御箱に繋がっているようだ。電源ケーブルレス地上子は電源ケーブルを外部から取ってはいないが、制御部は地上子の外にある。このことは鉄道総研・月例発表会2009年8月19日 第226回車上速度照査式ATS-Xシステム,新井英樹の3ページ下部を見ればわかる。

DN形と相性が悪い速度警戒装置

さて、JR九州ではS形の段階で登場していた分岐器速度警戒装置が場内信号機手前に多数設置されていて、待避線に進入する場合に分岐器の速度制限に対する速度照査を行い、照査速度を超えた場合にはS形のロング警報が鳴る仕組みだ。この装置が設置されている場所では、出発信号機に対するS形ロング地上子は場内信号機の内方(先)に設置され、低速で走行していた場合には構内に入ってから出発信号機に対するロング警報を受信するかたちだ。

他社での扱いは知らないが、JR九州の駅で速度警戒装置が設置されている停車場では、進路に関係なく出発信号機が停止を現示している時には速度警戒装置を使っている。具体的には、ノロノロ運転などで照査速度より低く走行している場合は、主本線上で着発する列車や通過する列車であっても、駅構内に入ってからの速度照査なしのロング地上子を通過するまではロング警報を受信しない仕組みである。S形のロング警報は最高速度からの防護ができなければならず、低速で走行している列車にとってはかなり手前からロング警報がなるかたちになるが、分岐器速度警戒装置が設置されている場所については速度に応じて最初の警報箇所が変わる仕組みになっている。

さて、この速度警戒装置が設置されている停車場で、出発信号機が停止の場合、ATS-DKとATS-DNでどのように動作が異なるのか比較してみよう。

ATS-DKの場合

DK形で本線の場合、速度警戒装置の更に手前の地上子で出発信号機に対するパターンを発生させるはずなので、途中のS形ロング警報を受信してもDK形の動作のみでロング警報は鳴らない。そして出発信号機に対してのパターン照査は確実に行われる。また、速度警戒装置が出発信号機のみの速度照査としては速度が低く設定されているため、パターン照査の方がより実態に合った照査と言える。

一方待避線に入る場合は、出発信号機に対する信号パターンだけではなく、分岐器に対しての制限パターンも同時に発生させなければならない。従来の速度警戒装置では速度照査を行いロング警報を鳴らすだけだったが、警報を鳴らさずにパターン照査を行うことでより安全にしなければならない。

なお、DK形ではパターン発生の信号に信号機までの距離情報を入れているため、番線によって信号機の位置が異なる場合にも1つの地上子で対応が可能である。

ATS-DNの場合

DN形ではパターン発生時に距離情報を受信しないので、番線によって出発信号機の位置が大きく異なる場合は、番線によってロング地上子の場所を変えなければならない。まず、どの番線も出発信号機の位置が同じ場合を考えよう。

DN形で本線の場合、パターン発生はS形地上子によるS形ロング警報の信号を使って行う。速度警戒装置の速度照査で照査速度以下の場合はパターンは発生せず、速度警戒装置の2点間地上タイマー照査で照査速度を超えた場合にはパターンが発生する。速度警戒装置の手前でパターンを発生させようにも、S形ロング警報の信号をつかっているため従来のSN形のみの車両でロング警報が発生してしまう。このようにどちらかを立てればもう片方が立たない状況になる。

待避線に進入する場合も出発信号機に対するパターンは同様となるが、分岐器に対しての制限パターンも発生させなければならないのは同じである。なぜなら、分岐器に対しての速度警戒の照査速度を超えていても、出発信号機に対するパターンしか発生せず、またロング警報もないためである。そのため、DN地上子のデジタル信号で分岐器に対する速度制限パターンを発生させる必要がある。なお、速度警戒装置で照査速度以下だった場合は、速度照査なしの出発信号機に対するロング地上子でパターンが発生する。この点は本線の場合と同じである。

では、進路によって出発信号機の位置が異なる場合はどうなるだろうか? 速度警戒装置の手前でパターンを発生させる場合はSNのみの車両で速度警戒装置を使用する意味がなくなる。一方進路に関係なく速度警戒装置を使用するやり方をやめ、待避線に入る場合にだけ速度警戒装置を使用すれば、速度警戒装置のロング地上子でロング警報を受信した場合には待避線だとわかり、他のロング地上子で受信した場合には主本線だとわかる。この方法では主本線のロング地上子を手前に移動させなければならず、速度警戒装置との配置に注意が必要になる。速度警戒装置を待避線にのみ使用した場合、S形のみを搭載した列車が本線に進入する場合、低速で走行しているときも手前からパターンが発生する。

DN形ではパターン解除の地上子は新たに設置が必要だが、パターン発生の地上子は従来のものをそのまま使用できる特徴がある。DN形では速度警戒装置の点照査よりも安全度の高いパターン照査を使用している。しかし分岐器速度警戒装置が設置されている停車場で地上子がそのままの場合は、最高速度からパターン照査になるとは限らず、場合によってはより安全度の低い点照査の後、途中からパターン照査となる。また、これを解消するために地上子の設置法を変えた場合は、従来のS形のみの車両に対して速度に関係なく一律にロング警報が鳴り、速度に対する警報という意味合いが薄れてしまう。

JR九州での速度警戒装置の実際(写真)


千早操車場の上り。左が旅客線で両渡りを右に行くと貨物着発線。写真の白いS形ロング地上子は千早場内に対するもの。千早場内に対する新設のDKパターン発生用地上子は、既に通り過ぎた千早操車場の場内に対するパターン解除用のどれかが担っているはずだ。なお、ポイントの先の信号機の確認位置は、千早場内の1つ目の中継信号機のもの。


千早操車場の上り旅客線。写真は千早場内の1つ目の中継信号機で、写真手前の新設地上子は千早出発に対するパターン発生用と思われる。奥に見えるのは速度警戒装置の地上子。


1つ目の中継信号機を過ぎた地点で撮影。1つ目の速度警戒装置の地上子が見える。奥に見えるのは千早場内の2つ目の中継信号機。


2つ目の中継信号機を過ぎて少し進んだ地点で撮影。手前の3つの地上子は、手前から1番目の緑の地上子と3番目の白の地上子が速度警戒装置の地上子で、2番目の黄色いカバーがかかっているのが新設地上子。さらに場内信号機手前に黄色の新設地上子とオレンジの直下非常の地上子がある。


場内信号機手前、パターン解除用の新設地上子と、オレンジの即時停止地上子。場内信号機の先に白のロング地上子がある。


場内信号機を過ぎたところにある出発信号機に対するロング地上子。ノロノロ運転で速度が低かった場合には、ここで初めてロング警報が鳴る。

おわりに

以上が今回観察してきてわかったことであり、実際に使用開始してからかぶりついてみないとわからないこともいくつかあった。ATS-DKの車上装置は、ATS-DKの車上表示装置を見てきましたで示すとおり、表示灯が多数あるため被り付けば何をやっているのかは見てわかるだろう。今回よく解らなかった地上子を使わないパターン解除は、「信号P発生」の表示灯を見ればわかるし、絶対位置確定地上子は「DK位置確定」の表示灯を見れば解るだろう。

今年度に入ってから地上子が多数設置されたようであるため、今年度末に使用開始なのかもしれない。実際に使用開始された後に見てみるのが楽しみである。

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